地域別演奏スタイル
Jamestown, Northern Ireland
日本でもそうなのですが、伝承音楽の演奏法はは地域性を持っています。当然のことながらアイルランドでも地域で育まれた独自のフィドル奏法を伝承してきました。ラジオやレコードなどのマスメディアの出現によってその独自性に異変がもたらされたようですが、最近ではそれぞれの地域の演奏スタイルを守ろうという動きが顕著のようです。
Map of Ireland
- ドネゴール北部・タイロン西部・タイロン北西部
- この地域の奏法を一口で要約するとアグレッシブということになるそうだ。基本的にはテンポは早く、メロディは軽く響くが非常に複雑だといえそう。非常に攻撃的なタイプの音楽を演奏するプレーヤーもいるようだ。
- デリー東部・アントリム・タイロン南西部
- 英国北アイルランドに位置していて、スコットランドに近くドネゴールと同様その影響が強く残っている。テンポはやや遅いが、力強く高度で華麗なアルスター地方特有のスタイルだ。
- ドネゴール南部・ファーマナ・レイトリム北部
- 力強いアルスター地方の奏法とリズミカルなスライゴー地方の奏法の中間的な存在。ドネゴール南部では北部のスタイルから離れてより速度を増したものだが、依然そのスタイルを踏襲しているといえる。ふたつの異なった様式を融合させている点が特長だ。
- スライゴー
- アメリカへの移民たちによる録音によって、この地域の奏法スタイルはアイリッシュフィドルの代名詞として広く伝播したといえるだろう。そのひとりであるマイケル・コールマンのSP盤はその異常ともいうべき高度なテクニックにより人々を震撼とさせたようだ。現在でもアメリカに限らず、本国アイルランドのフィドラーの多くが、地域性を離れてこのスライゴースタイルを援用しているという事実がある。早いテンポ、華麗な技巧は耳に心地よい。
- ゴールウェイ東部
- この地域の音楽は、スライゴーのそれと非常に異なる。音楽のムードにプレーヤーがもっと集中することを可能にするために、ペースを縮小している。このエリアのチューンの多くの場合高度にして華麗である。しかし全体的な印象としてなんとなく物足りないものがあるという意見もある。
- クレア
- この地域はもっともアイルランドらしい風土を備えているかもしれない。ゴールウェイとはまた違って、いわばゆったりしたスタイル。クレアの音楽のペースは比較的スローで、メロディも軽いといえそうだ。
- ケリー・リムリック・コーク北部
- この地域の総称がシュリーヴ・ルクラ。スライドとポルカがトレードマークとしているのが特長といっていいでしょう。一世代前にまでそのような大きな人気を評価したこのリズムは他の地域のフィドラーにインパクトを与えるという影響を残している。
